虚構と現実をゆーらゆら「ぶらんこ乗りbyいしいしんじ」


いしいしんじさんの「ぶらんこ乗り」を読了しました。
児童書みたいな文体だけど、どこか不気味で物悲しい。
作中に色んなメタファーが含まれていそうで、奥深さを感じる。
想像力のたくましい人に向いてるかも。

私は慎重で臆病な子どもでしたから、どこまでも高くブランコをこぐなんて少年らしいことはしなかった。すぐに怖くなった。落ちるんじゃないかって。怪我するんじゃないかって。
人のブランコを押すほうが好きだったかも。お餅をペッタンペッタンつくように、タイミングよく力を加える。押した分だけ盛大に戻ってきて、「もっともっと」と言ってた友達が「もうやめてもう押さないで」と言うのを愉しみにしていた気がします。

さて、本作はぶらんこに乗るのが得意な弟を思い返す姉のお話。児童書みたいな文体で、ちょっぴりファンタジーで、不気味で不思議で悲しいお話。
物語の語り手たる姉の一人称で話が進む。現在ではいなくなってしまった弟を思い返す。弟が書いたノートが手元にある。そこにはお話が綴られている。
弟の身に降り掛かった事故、弟の孤独、犬の話などを思い出す姉。

文体にものすごく特徴があって、大人が計算して書いたなら芸術的だと感じる。なんせ子どもが書いたような文章を見事に表現している。
また、弟がノートに残した絵本みたいなお話も、なにかのメタファーがありそうで深い。
不思議なことが起こるのだが、それは弟に聞いた話として描かれたり、自分の思い込みかも、などと振り返ったり、虚構と現実を行ったり来たりするような感覚になります。

読者としては、弟が今はいないことが冒頭で示されて、その弟の不思議なエピソードが語られて、なぜいなくなったんだろうかとハラハラしながら読み進めることになります。その過程で明らかになるペットを含む家族の物語。
面白いかというと微妙なのですが、特徴的な文体で押し切るタイプの本かなと思います。
たくさんの本を読めば読むほど、文体の方に興味が湧いてくるのかもしれません、ストーリーって無限にパターンがあるわけじゃないし。

文体といえば、一人称、三人称、多人称の他に、過去振り返り一人称が別に存在する気がしました。

私は慎重で臆病な子どもでしたけど、今では人生に対して無謀です。
ぶらんこに乗ると、あの揺れによってなんだか気持ち悪くなりますけど、鉄棒はやります。
空中逆上がりができるんですよ。
地面を蹴らずに振り子の勢いだけで逆上がりをするのです。
去年練習したんです。
大人なのに、無謀でしょ。
ヘヘッ


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