1文が長すぎる!「乳と卵by川上未映子」


川上未映子さんの「乳と卵」を読了しました。
驚きました。モデルみたいな人、という印象だったのにこんな文体!?
散らかったガラクタ屋で掘り出し物を探すような言葉の激流です。
クライマックスにも異常な説得力がある。
芥川賞作家は……参考にならねぇ。

私は小説を読まずに生きてきましたので、自分が面白いと思う作品に出会っても、本当に面白いのか自信がなくて、例えばアメリカ産牛肉のステーキを美味しそうに食べて、松阪牛のステーキ食ったことないのかよ、と鼻で笑われるんじゃないかというような、怖れを持っています。
これを克服するために、名作を読もう、国語便覧に載ってる作家さんを新しい人から網羅しよう、と企んでいるのです。けなげでしょ。

今回は第138回芥川賞受賞「乳と卵」の川上未映子さん。
Twitterにご本人の投稿が流れてきたりして、私はモデルみたいな人だな、と思っていたのです。さぞかし、ハイソな、セレブ感のある、女子力って感じの作家なのだろうなと勝手に想像していた。

ですから、ビックリしました。
ごちゃごちゃしてる。
一文がめっちゃ長い、ウィキの表現を借りれば「改行なしで読点によって区切られ、延々と続く文体」、セリフの鉤括弧もないのです。
これがもう、ガラクタ屋みたいに雑然としてて、だけど見逃せない宝物が眠ってそうな気がして、現に意味が分からなさそうでもよく分かるんですよ。ストーリーの内容と文体もめちゃめちゃフィットしてて、うわわわ、文芸だー! と私は思いました。

中年女性の視点で語られ、姉とその娘が大阪から東京に泊まりに来るという、この3人で話が進みます。どうもそれぞれに悩みを抱えているようだ。
特に、女性特有の話で到底男には立ち入れないし、絶対に書けない作品です。
女性へのぽわわんとした幻想を打ち砕かれますね。

物語の工夫としては、作中に日記なのか散文なのかが挿入されていて、意味不明さが増していますが、最後にはスッキリとします。
あと、あるものがクライマックスで壊されるのですが、それが何かを象徴しているようで、上手いなぁ、こういうのが必要だなぁと思いました。

また、「乳と卵」の他に「あなたたちの恋愛は瀕死」という短編も収録。

女性って「美しさ」への社会圧がありますよね、そういうテーマ性を感じましたね。

私は自分が小説を書くための物語論やら文体の研究をしているわけで、芥川賞受賞作のような作品は真似しようがないので、避けるべきかもな、と思いました。到底無理だ。
エンタメ小説から先に読みます!


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