笑えて泣ける!上手すぎる!「永遠の出口by森絵都」


森絵都さんの「永遠の出口」を読了しました。
【超オススメ!】思春期を描いた連作短編小説で、どこかエッセイ風だ。
文章のリズムが良くてすごく上手い。文芸とはこのことか!と感嘆した。
大きな事件は起こらないのに、心がザワつく。生々しくて剥き出しの青春。一文一文のパワーがすごい。

私は小説を読まずに生きてきました。それなのに小説投稿サイトに参加しはじめ、勉強のため読書会を催すようになった。だが、そこには埋めようのないギャップが生まれます。「坂口安吾」とか「乙一」とか知りませんでしたし、本作の「森絵都」も同じくです。
読書会において参加者を迎え撃つために、国語便覧を購入したのです。これが読み応えがあって、いとをかし、なんですけど、現代文の欄に出てくる作家さんを制覇しようと決意しました。スタンプラリーを巡るように。

さて本作、「永遠の出口」ですが、めちゃくちゃ面白いです。文章のリズムが良くてサクサク読める上、展開が早く、驚きに満ちている。
スゴイんですよ。特に事件は起きない、序盤は恋もない、それなのに読む手が止まらないし、微妙な心のゾワゾワ感が生まれ、揺さぶられる。文字情報だけで読者の心を動かす、これが文芸か! と思いました。漫才師が笑いをとるように、彫刻家が木片から形を生み出すように、文字だけで、文字だけで、こんなにも!

大人の自分が思春期を思い返すエッセイっぽい連作短編小説で、小学三年生から始まり、高校を卒業するまでがメインのストーリーです。
大した事件は起こらないけれど、子どもだったその時はそれが世界の全てで、友達や先生や万引きや恋などが、みずみずしく、生々しく、時に痛々しく描かれていて読ませるんですよ。
ストーリーとしては「ちびまる子ちゃん」の成長を追いかけるような感覚を抱きました。

とにかく、冒頭だけでも読んで欲しい。

私は、<永遠>という響きにめっぽう弱い子どもだった。

から始まるんですけど、どんな風に弱かったのかを語りながら、ザワっと心を揺さぶって、すこし寂しく、さらには次につなげていくこの一節を読んで欲しい。
ここを読んで、何も思わなかったらこの本を読む必要はないんですけど、なにか感じるものがあったら、ぜひお手に取って頂きたい。

たとえば電車に乗って、向かい側のシートに美しい女性が座って前髪をいじっている。普段の私はとっても気になって視線をチラチラと泳がせるところです。しかし、この本が手元にあったならば、続きの方が読みたくなる。美女などなんのその。それほどまでに魅力のある作品です。

文章自体が上手くて面白い人には太刀打ち出来ないなぁと思いますね。
ああもう、ほんと、小説家になんてなれねぇや。


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