宮下奈都さんの「羊と鋼の森」を読了しました。
めちゃめちゃ良くて瞳に涙をためました。読む喜びでたびたび背中が震えた。
お仕事・青春小説で青年が悩みながら成長する物語。
一文にわたる比喩表現すごくて、アレを文字で表現しようとする誠実さとソレが伝わってくる凄さに感動します。
静謐さの中に優しい喜びが詰まってる。
普遍的な仕事への悩みが描かれていて、それが文章表現の悩みにも共通していて、共鳴を禁じ得ない。
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私は小説の読書経験が少ないので、名作をたくさん読もうとしています。
本作は第13回本屋大賞(2016年)に選ばれ、映画化もされている名作です。
ファンタジーでもミステリーでもなく、ヒューマンドラマ・青春小説です。
青年が仕事に打ち込む話で、悩みながらも成長していきます。
文章って、文字ですよね、黒い記号の連続。ですから表現が難しいことってたくさんあるんです。
その難しいことに誠実に表現しようとすること。比喩表現を使ってなんとか伝えようとすること。これが伝わってくると、背中がゾワッと震えます。
何度もそれがきました。
文章表現の難しさと作中で主人公が抱える仕事の難しさがリンクしていて、二重の意味を持って押し寄せてきます。
お客さんの要望をどう解釈すべきか、自分の目指すものをお客さんの求めるものは合っているのか、そもそも自分は何を目指していて、そこを目指せば行きつけるのか、どうすれば行きつけるのか。
お客さんを喜ばせるのか、お客さんのお客さんを喜ばせるのか、自分は主役なのかサポーターなのか。
ストーリーはとても静かで主人公に大きな出来事は起こりませんが、双子の姉妹の思いやりと、表現が伝わってくること、これらに感動を覚えました。
主人公の仕事自体が珍しいので、非日常がある。
主人公に対し、女の子が二人出てきて、どっちかとどうにかなるの? という気持ち。
師匠の重い言葉、皮肉っぽい先輩の同意できない言葉、頼りになる先輩との交流。
お客さんに認められない主人公。
章で切られずとつとつと進む話。
私は物語論として何かを学び取りたいのですが、なぜ夢中で読み進めたのか詳らかには解明できませんが、自分にとっての非日常性と主人公の心境との共鳴性が同時にあって、止まんなくなったのだと思います。
ヒューマンドラマ系が好きな方には超オススメです!