桜木紫乃さんの「ホテルローヤル」を読了しました。
ラブホテルを舞台にした連作短編小説。直木賞受賞作。
愛でも暴力でもないセッ○スの話で、なんとなく痛々しい。すごいところを主題にしてくる。
時系列が遡っていくのでちょっとしたミステリーがある。面白かったです。
○
私は大っぴらにセッ○スの話をする人じゃないので、この本を紹介するのは難しい。
ラブホテルの話ですから、自分の体験談を書きたいところですが……、
そういう体験はない(ことにしておきたい)。
チェリーボーイです(キャラ的には)。
そんなチェリーボーイがチェリーツリーたる桜木紫乃さんの作品を読んで刺激を受けたのですけど、
セッ○スは愛の結晶として描かれたり、あるいはレイプのように暴力として描かれたりしますが、そのどちらでもなく、合意はあるのになんとなく痛々しいセッ○スが描かれている。
ラブホテルが主役なのですが、その周辺を舞台に、7篇の物語で6人の女性が登場します。
それぞれ容姿には恵まれず、地方都市に住んでいて、幸せってなんだろう? などと思いながら過ごし、行為が行われる。
そこに、生きることの切なさを感じざる負えない。
華やかではない人が主人公になれるのが映画や漫画にはない小説の良さだとも思いました。
また、時系列が逆に進む、要するに過去に遡るように物語が展開されるのですが、1章ではラブホテルが廃墟になっているところからスタートする。読み進めると、閉館が描かれたり、閉館の原因になった出来事が明らかになったりします。
これがミステリーっぽくて面白いし、読者は未来がどうなるか知ってるのに、登場人物は知らない未来に向かって生きている。このやるせなさ。
こういう点で読み応えを出す手法、すごく上手いです。
そもそも、主題が難しいのに、読ませる物語を書けるのって本当にすごいですよね。ドーンとか、バーンとかならずに、粛々、粛々と。
腕があるなぁ。
私も小説を書くのですが、なかなか長編小説は書けなくて、短い話が連なって文庫本くらいになる連作短編スタイルを研究するため、本作を手に取ってみました。
なるほど、スポットを同じくすれば連作として成立する可能性があるわけですね。勉強になった。
チェリーボーイの私はラブホテルを舞台に選べないので、ボードゲームカフェが舞台の連作小説とかどうかな?
第1章カタン、第2章ごきぶりポーカー、第3章ハゲタカのえじき…
お題で鍛えた構想力があれば、いけるかもしれん!