物語づくりの入門書にも最適「マンガの描き方by手塚治虫」


手塚治虫さんの「マンガの描き方」を読了しました。
小説を書く参考にしようと思ったところ、やはり要点がまとまってて良いです。
私はあまり小説を読まずに生きてきたので、太宰治より手塚治虫。
あくまでも入門書なので、自らの肉付けは必要ですけど、テクニックを学ぶ前に全体を俯瞰する一冊として良いと思う。

手塚治虫先生が好きだ。
私が幼い頃はまだ存命中であり、漫画といえば手塚治虫だった。火の鳥やブラックジャックは小学校にも置いてあり、アトムなどは何度もリバイバルさている。(私はメルモちゃんが好きだ。というのはさらっと流しておきますね)
ですから、手塚先生が言うことに間違いはないだろうと考えます。

本作は実用書で、プロに向けた指南書ではなくて、こうすれば誰でも書けるよ、という漫画の入門書です。(マンガで収入を得ようなんておすすめしないと書いてある。)
以下に見出しを紹介し、小説も同じだと思う点などを記しておきます。

第1章、絵をつくる

漫画の絵は小説における描写と同じことだ。

・落書きから始まる
小説も好きなように文章を並べるところから始めればいい。

・小さい子の絵には漫画の原点がある。
これは「省略」「誇張」「変形」だそうです。
小説も大事な点以外は省略するものだし、大げさな表現は面白いし、事実と違うことを書くのがフィクションだ。

・漫画は庶民の批判精神なのだ
自分の煩悩、欲求がある。その中には不満がある。不満には世間、他人、政治、あるいは自分自身への不平が普通だ。「こうなればいいのに」という希望を描くのが漫画である。これは小説にも言える。
「からかい」があると良い。褒める漫画は面白くない。自分と同じような人間がやる失敗やおかしみ、さり気ない毒があると面白い。

描きたいものを頭の中にスケッチする
心のデッサンと本物のデッサンをしておくこと。
よく観察しておくってことですね。
小説のトレーニング手法でも、実際に見ながら書くというのがあったはず。

漫画の絵は嘘を書くものだ
そんな人いない、そんなこと起こらない、などを勇気を持って書くべきだと思いました。

・特徴だけハッキリ書けばいい
登場人物のトレードマークがあれば良い。これにより人物がイキイキしてくる。
小説でも何かしらシンボリックな特徴は明示したいと思いました。癖とかね。

・喜怒哀楽の出し方
実際に人間ができないような表情を描けるのが表現の面白さ。
小説においても表情の描写に工夫が必要だと思いました。

・見えない線を書こう
漫画では頭上に電球が浮かぶなど、見えない物を描く。
同じく小説でも、実際には見えない物、聞こえない音などを書いても良いのだなと思いました。

・しぐさはオーバーに
小説では上手な比喩表現ですかね。

・効果音について
擬音語ですね。

構図のとり方
これは背景についてなのですが、人物がいる場所がわかれば最小限で良いと書いてあります。
しかし、劇画やストーリー漫画では、場面のリアリティが必要だとも書いてある。
まぁ、状況次第って感じですね。

第二章、案(アイデア)をつくる

この章では、演繹法と帰納法に触れられています。
アイデアは机に向かっててもなかなか出てこないとのこと。

・4コマ漫画がつくれればどんな漫画でも描ける
長編に挑戦する前に、面白い短編をちゃんと書こうと思いました。

第三章、漫画をつくる

・個性的人物を描けば勝手に活躍して物語をつくる
個性的な人物ができたら、ある状況においたらどんなことをするだろう、と考えてみる。
キャラクターの重要性ですね。

・一番印象に残った体験から物語が生まれる
手塚先生は敗戦後の米兵からの理不尽な仕打ちがずっと印象に残って、それが作品に影響しているとのこと。あるいは、死にたくないという気持ち。
自分の書きたいものをぶつけた時に、人は感動する。
他の人の話を脚色しただけでは、良い物語が生まれるはずはない。

自分の身に降りかかった悲しいことや悔しいことが物語になって昇華できるのは、表現者の大きなメリットだと思います。

・主役を決め、台本を書く
長編を書くためには、テーマ・シノプシス・主役が三本柱。
テーマは教訓とか欲求とかですかね。

台本については用語のイメージがややつかみにくい。
1.テーマ(主題)を考える
2.プロット(構想)をつくる
3.ストーリーづくり
 ①シノプシス(あらすじ)  ②箱書き ③台本(シナリオ)
 これは三段階で詳細にしていくようなスタイル。漫画だから四段階かな。
4.キャラクター、かたき役、三枚目など

長編は何ページにどんな話を持ってこようかと割り振ってから描き始めるべき。

あと、目新しさが必要だそうです。

基本的なことですね

上記の通り、一生懸命抜粋してまとめてみましたけど、ほとんどが基本的なことですね。
私は一年半ほど小説を書いてみて、うすうす気づいていたことばかりなのですけど、手塚先生がまとめて下さっているのだから、間違ってはいないでしょう。

これらを基本として、技術の枝葉を育てていくイメージですね。
いい小説を書くには、文章の上手さ、アイデアの面白さ、ストーリーとして構想し組み上げる力、それぞれが必要。技術を上げていこう。

さて、手塚先生はプロになるのはおすすめしてないわけですが、もしなりたいなら、とにかく量を書けと、数年続けてそれでも執筆意欲が衰えなければなにかの縁で幸運が舞い込むだろう、とのことです。
書き続けてきた自分は裏切らない、ってことですかね。

そして、プロになるには際立った個性が必要。
だがこの個性は、書いてる本人は絶対にわからない。
これを掘り出すのは第三者だ。
って。自分の作品を好きになってくれるファンのことは本当に大事にするべきですね。
目先のコンテスト受賞よりも大事なものがあると、今は考えています。

最近の若者は青いキャンディも赤いキャンディも知らんやろうけど、私もよくは知らないんですよ、幼い頃にインパクトを受けただけでね。
世代としては、ひみつのアッコちゃんかな。



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