大崎梢さんの「夏のくじら」を読了しました。
よさこい踊りの青春小説。+人探しミステリー。
踊りや祭に打ち込む人々の青春と、淡い記憶をたどる恋心ミステリーが組み合わさって良いエンタメ小説。
著者のよさこいへの情熱がよく伝わってくる。踊りたくなった。
○
「くじら」をタイトルに冠する小説とたまに出くわす「52ヘルツの・・・」「・・・の彼」「凍りの・・・」。
どれも未読ですが拙者はくじらが好きなんですよね。
食べる方ですけどね。
ですから「夏のくじら」というタイトルだけで美味しそうだと判断し、買ってみたところ、高知県のよさこい祭りの小説でした。
大丈夫、大丈夫。
踊り関係も大好物です。
本作は大学生男子が主人公で、従兄弟の影響でよさこい踊りに無理やり駆り出されます。
この主人公、実はよさこいに悔しい思い出がある。
なぜなら4年前に参加したのだが、いい感じになった女性が幻のようにいなくなった。
あの人には何があって、どこに行ったのか? 再びよさこいをやれば再会できるだろうか?
よさこいをテーマにした青春ラブコメ展開かと思っていましたが、人探しミステリーもメインのプロットでした。また、バディものの側面もあるしエンタメてんこ盛りです。
前半は巻き込まれ型主人公で低調。目的がはっきりしない。スロースターター。
後半は祭りが情熱的にもなっていくし、人探しも進展していくし、物語が面白くなります。
文体にはあまり馴染めなかったし、時制が分かりにくいとこもあり、読みにくいと思っていたが、関西のイントネーションで読むと、サクサク読めることがわかった。土佐弁もよく出てくるので、土佐イントネーションで読むべき小説なのかもしれん。
全体を通して、著者が持つよさこいへの情熱が伝わってくる。
「よさこい楽しい!」「よさこいの小説書きたい!」って。
その情熱を上手くエンタメにしてて、とても羨ましい。
拙者はよさこいはやったこないけれど、盆踊りやフォークダンスなどの経験があり、あの楽しさを小説の題材にしたいと切望している。その小説によって業界が活性化したらいいのに、と願ってもいる。
祭りのときの共同作業によって恋愛に発展しやすいことも書かれており「そうそうそうそう」と何度も顎を上下させた。
というのも、拙者は選挙ボランティアをしたことがあり、あれって1週間以上つづく祭りみたいで、恋に落ちた記憶がなくもない。
昔の話だ。
この夏は1人で黙々と祭りの準備をした期間があったけど、それでも楽しかったから、みんなでやるのはもっと楽しいはずだよな。
最近では協同するのを避けて個人技を磨いていたけれど、また祭りみたいなことをやりたいなって思えた。
そして、恋に落ちたいよ、テヘヘ。
よさこい祭りは毎年8月9日から12日にあるらしい。
ちょっくら高知まで行ってみて、くじらでも食べながら酔鯨でも飲むかー。