藤沢周平さんの「蝉しぐれ」を読んでみました。
時代小説を読むなんておじさん臭いかなぁ、と思っていました。
意外に王道少年漫画的で青春小説だった。
何歳になっても、青春したらいいよね。
○
どうも時代小説はおじさん向けというイメージがある。
これは、私が子どもの頃にバラエティとかアニメが見たかったのに、親や祖母と一緒にテレビを見るせいで、水戸黄門とか銭形平次とか遠山の金さんとか大岡越前とかを見せられたせいだな。(でも、必殺仕事人は好きだった)
きっとこのせいで、時代劇のイメージがちょっと悪い。
そんな悪印象を持つ私ですが、たしか京都新聞で「藤沢周平は名文家だ、文章が上手い」などという記載を読んだので、「上手い文章とは何を指すのか?」と気になり、藤沢作品を読んでみようと思った。
「蝉しぐれ」を手に取り、おじさん臭い表紙だな、フンッ、とばかりに読み進めてみた。
すると、うまい文章かどうか私には分からないのですが、とても面白い。
おじさん向けかと思いきや、青春小説だった。少年漫画だった。
少年漫画を文字で読むような感覚です。
いわゆるヒーローズジャーニーな小説。
青年の文四郎が、恋心を知ったり、友情に救われたり、敵キャラと競ったり、自分ではどうしょうもない環境に翻弄されたり、強くなったりと、少年ジャンプ的な展開です。私にとってはとても馴染みのあるような話だ。必殺技を伝授されたりするのもお決まりって感じ。
ですので、とても読みやすかったです。青年が読んでも好感を持つと思う。
父を不幸に追いやったのは何が原因だったのか? というミステリー要素もあり、引っ張る要素が強いです。序盤でお家がお取り潰しの危機に見舞われる。
あるいは、好きだった子はどこへ行くのか? セクシーなお姉さんが近くにいるのだけどどうしよう? など、引っ張る力が豊富なストーリーです。
で、肝心の文章の上手さを理解できたかと言うと、私には分からない。
無駄のない文章だと思うし、風景描写がいいタイミングで出てきて美しいとも思う、アクションシーンもググッとくる。
自分の抱いた気持ちは理解できるけれども、なぜそう思わせられるのかは理解できない。比喩表現が目立つわけでもない。
上手い文章とは何なのか? 全く理解できない。
どういう点が上手いのか、誰か教えて欲しい。
私は美味い日本酒なら判別つくんですけどね。
とにかく、面白い小説です。
章が短くて変化に富んでて読みやすいです。
次の章はどうなるんだろう? と気になります。
ヒーローズジャーニーのお手本のような小説。
それを時代小説にできる力量が素晴らしいんですよね。
文章に無駄がないのでじっくり読まねばなりません。飛ばし読みする隙がない。まるで腕の立つ剣豪のようだ。
オススメです。
さてはて、
私は初恋の人の前に立っても、堂々としていられるだろうか?
精一杯に人生を歩んできたぜ、と言えるだろうか?
あの時、ああだったら、ああだったのにな、、、
あの時、あの駅前で、君を花火に誘えていたらな、、、
そんな少年の心を持つ皆様に特にオススメな小説です。
女性向けな点はあまりないと思われます。
時代小説は色褪せなくて良いですね。おっさん向けではなく、青年からジジイまでが読めると思い知りました。
私は十分におじさんな年齢になりましたけれど、まだまだ青春しますよ。
その方が平和だと思うからね。
そう、あわよくば、私の書いた物語が本になって欲しい……。