母への愛を綴るのはムズい「東京タワーbyリリー・フランキー」


リリー・フランキーさんの「東京タワー」を読了しました。
一昔前のベストセラー。自伝的小説。
ほぼ自伝なのでとても臨場感がある。また時折ポエミー。あとたぶんギャップ萌え。
丁寧に丁寧に母への感謝が綴られて、自分のダメさが吐露されて、そして死について考えさせられる。
人の人生に触れてしまえる作品。

少し昔の話。拙者が主戦場としている小説投稿サイトmonogatary.comで「19歳、悩んでいる傍らにはいつも母がいた」というお題のコンテストが出題された。
大賞作品は美少女がYou Tubeで朗読してくれるらしい。
拙者は「美少女!? 美少女と関わりが持てるなら頑張る!」と至極純粋な気持ちで筆を執った。
しかし、これは無理な戦いだった。女性の一人称で書かねばならなくて、それは苦手だとわかっていて、しかも母がテーマというのだから二重苦。
結果はもう惨敗で、そんなコンテストがあったことも、美少女の名も記憶から消し去った。

だけれども、母への想いをテーマにした小説って何かあったかな? と考えたところリリー・フランキーさんの東京タワーしか思い浮かばなくて、参考になるかもって買ってたんだった。

本作は自伝的小説で母への感謝で溢れています。
また主人公が幼少期に過ごして九州の生活様式、世相なども細かく書かれており臨場感がある。話の筋とは関係なさそうな話も多い。
別にリリー・フランキーというオッサンの幼少期の思い出なんて聞きたくはないのだけれど、男子ならば共感できる部分が多く、少年時代を思い出せたりしなくもない。
リリー・フランキーさんは現在58歳ということで、私よりも半世代上って感じですな。

物語としては、どこまでどんな風に進むんだろう? と考えながら読みました。
主人公が出世する物語なのか? オカンとオトンの関係が書かれるのか? オカンが病気になるけどどうなるのか?
描写が細かくて臨場感があるのが最大の魅力です。どうでもいい思い出話が多々挟まれるのに、読み進められる。

男性が母親への愛情とか感謝とかを綴るのってとても難しい。
拙者の場合は愛情もあるし感謝もあるけれど、不満ものっかってくるので、母について書くのは歯切れが悪くなる。
また、男の役割は好きな異性への愛情を表明することだ、という気持ちもあるし、ほんっと書けないよな。
そんなこんなで、本作は比類なき小説なのではなかろうか。

ちなみに、拙者がオカンをテーマに投稿した小説作品はこちらです。
>>茶化さんといてやオカン
2分で読めますよ。
まぁ、自分らしさは出てるけど、美少女は朗読できんよなぁ。
臨場感も足りないな。

人はいつか死ぬからなぁ、
自分も当然死ぬからなぁ、

何か、作品を遺したい、と思うし、
体が動くうちに思い出を作っておこう、とも思う。


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