映画「味噌カレー牛乳ラーメンってめぇ~の?」原作者の苦しみについて


「嘘つけ!」って、思ったんですよ、
私の書いた文章が大賞に選ばれたと聞いた時。
でも、映画を見た後ならば納得。
「このテイストはオレの仕事や」って、やっと安心できた。

爽やかな日差しが届く2022年4月17日(日)、梅田ブルク7にて「味噌カレー牛乳ラーメンってめぇ~の?」を鑑賞しました。
これは原作者が「石黒志玖夢」と書いてあって、それってたぶん……私のことだ。
とても光栄です。
だけど私はボロボロです。

名ばかりの原作者

私がmonogatary.comに物語を投稿し始めたのは、2020年11月のこと。
眠れない夜に小説を読もうと思ったが、手元に本がない。ならば自分で書いてやろうと思った。3時間かかった。
どうせやるなら10作品は投稿してやろうと決めた。
その中に、映画原作オーディションが紛れ込んでいたのです。
「訳わからんお題やな。面倒くさいな」と思ったのが実際のところ。
「サブカル女子高生って何なん?」と思いながら書いたのです。

一応は完結させておいたところ、大賞受賞の一報が入った。
「嘘つけ!」って、思いましたよ。

ちゃんと実力のある作家さんなら、わ~い! って喜べると思いますが、私などそんなつもりで書いてなかったので、すごいプレッシャーに苛まれました。
「名と実力が合ってない!」

で、この賞の性質上、受賞があって、制作があって、映画公開があるわけで、1年くらいの期間が生まれる。
この1年の間に実力を上げまくって、映画原作者として恥じぬ自分になろうと思ったのです。
とにかく書いて、色んな実験をして、本を出すような作家を目指したのですが、無理がたたって精神を病みました。
「オレの実力はこんなもんじゃない、こんなもんじゃない、もっと書ける」
そう思って頑張ったけど、全然ダメだったなぁ。
ボロボロになりました。

映画公開時には石黒志玖夢先生!と、もてはやされ、3000人くらいは劇場に動員できる存在になろうと切望したのですが、風の前の塵に同じでしたね。

諦めた。

仲本愛美さん、可愛い

そんな、無為の境地で映画を鑑賞したのです。
「どうでもいいわ、知らんわ」くらいの感じ。

そんな私の冷めた心に、ヒロイン二本柳うつつがするする入ってくるのです。地に足の付かない夢を描く女の子。
ハイカットのスニーカー、へんてこな歩き方、黒い髪、白目。
なるほど、サブカル女子高生ってこういう人か! ってやっと分かった。
あぁ、ヘッドホンを首にかけて、リュックに缶バッチをジャラジャラ付けてる子、いるいる! 京都でいうと小野ミサやな! と思いました。
(小野ミサ:京都市営地下鉄のキャラ)
どっちかというと好みのタイプ。

可愛いなぁと思ってい見ていたら、演じる仲本愛美さんの演技力がすごくて、後半はグッときた。
もう推します。ずっと推します。
NHK朝の連続テレビ小説のヒロインに抜擢されるまで推しつづけます。

原作の設定を踏襲

名ばかり原作者ですから、原作なんてお飾りだと思っていたのです。
「話は全部変わってるんだろうなぁ」と。
ですけど、冒頭はかなり原作が踏襲されていて、
「あ、知ってる話や」と、ときめきました。

大人の話をすると、おそらく映画企画の段階でストーリーの構想があったのだと推察するんですが、その構想を邪魔しない原作、あるいは新たな視点を付け加える原作、だったんだろうなぁと思います。

この映画のテイストなら他の誰でもなく、石黒志玖夢の「下北沢で出会った君の話」を選ぶなぁと納得したのでした。

ピー音

私を原作者に選ぶだけあって、流石にカオスな作品です。タイトルからしても分かる通り。
ハリウッドザコシショウさんがシュールで無意味で、本当に意味分からん。
さらにはやたらとピー音が入るんですよ。
「ピー音いるん?」と、不愉快になるくらいです。

ですが、これはクイズ的な仕掛けかもしれません。
キャストと脚本は女子中高生向きの内容なのに、サブカルの話題が40代向けの内容で、なんでチグハグなん? と思うのですが、これは親子の会話を促す目論見があるのかも。
映画のテーマの1つが「聞くこと」ですからね。

意外にも深みのある作品です。
もう一度見たい。

オレオレ

クライマックスで私は瞳に潤いをためたんです。仲本愛美さんの演技が良すぎて。感動しました。

そして、エンドロールが流れます。
一番最初に「石黒志玖夢」の名が出てくるんですよ。
「私でーす」と、大きな声を出してやろうかと思いましたが、怒られそうなのでやめておきました。
その代わりに、真っ暗な劇場の中で自分に人差し指を向け、「オレオレ」って心のなかで呟いておいた。
誰にも注目されずに、こっそりとね。

映画が終わり、スクリーンに背を向けます。廊下にサイン付きのポスターが飾られてあるのを発見。
「ああ、あの前で写真を撮らなきゃなぁ」と私は思います。

すると、二人組の女の子、中学生か高校生くらい、がポスターと一緒に自撮りしてる。
私はおせっかいなタイプであるし、映画の関係者でもあるし、ディ○ニーシーの元キャストでもあるので、ほっておけない。
「撮ったろかー? 撮るわー」と声をかけます。
スマホを預かり、パシャパシャしました。
「この子のファンなん?」
とポスターを見ながら私が聞くと、
「マヤちゃんのファンです」
とのこと。マナちゃん? マヤちゃん? 声優をした女の子がマヤちゃん。
二人はマヤちゃんが声優だけではなく隠れキャラ的に出演もしていると聞いて、前日に引き続き見に来たそうだ。
いいなぁ。推せるうちに推しとけ、それが青春だ。と、私は思いました。
そして私はここぞとばかりに、ポスターに記載されている「石黒志玖夢」を指差し、すぐさま自分の顔に人差し指をクイクイと向けました。心のなかで「オレオレ」と言った。マスクはしてるがドヤ顔。
「え、うそー」
と彼女たちは言ったけど、あぁ証明するものは何もないや、と私は切なさを感じました。ただの変なおっさんだと思われたことでしょう。
撮影時がコロナ禍じゃなかったら、私も隠れキャラとして出演を打診したのになぁ。

彼女らが立ち去った後で、記念に撮った一枚がこちら。

私は写真を撮り終えて、エスカレーターでロビーまで下る。
すると、さっきの子らが待ち構えてくれてて、
「写真撮って下さい」
と、目をキラキラさせてくれた。
「一緒に、てことやんね?」
あぁ、光栄だ。私が欲しいのはこういうのだ。

こうして、彼女らの写真に石黒志玖夢が収まった。

ちょっと待ってて、
今はまだ無名だけど、その写真に価値が出るように、私は頑張ってみる。

「サイン下さい」ってきゃあきゃあ言われるように頑張る。
私の書いた文章が本になって、その文面を読んでニコニコしている人を見るために頑張る。
仲本愛美さん主演のNHK連続テレビ小説の原作は石黒志玖夢を抜擢しても良いぞ。

お神輿

今回、映画に関わりを持たせてもらって感じたのは、
「映画ってお神輿みたい」って。
みんなで担いで、聴衆を楽しませるのが似てる。

みそめんは確かに小さい神輿かもしれないけれど、その分距離が近いのがメリット。出演された方とコメントのやり取りができたりする。
これはよい思い出になる。

「味噌カレー牛乳ラーメンってめぇ~の?」を担がれた皆様、良い体験をどうもありがとうございました。
コロナ禍での撮影や上映の延期など、本当に大変だったと思います。
私はプレッシャーで押しつぶされましたが、なんとか生きているし、まだまだ夢を描くこともできます。

まだ劇場で見るチャンスはありますので、未鑑賞の方はぜひぜひ。
>>https://misomen-movie.com/

私が書いた原作小説はこちら
>>https://monogatary.com/episode/103473
(本当に下手くそだけど、光るものはある)

結びにあたり、映画の担い手と観客の皆様と、そして私に栄光あれ!
我々の物語はつづく!


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です