村山由佳さんの「星々の舟」を読了しました。
不幸多き重めな小説。主人公が違う連作短篇小説ですが、同一家族なので見事な長編。大河ドラマのような読後感。
世代も抱える問題もバラバラな主人公を連作にする技術が凄すぎ。
小説らしい文体。濡れ場多め。
第129回直木賞受賞作。
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私は小説を読んでこなかったのに小説を書くようになったので、まずは有名作家さんの有名作をひと通りさらえようとしています。
今回は直木賞受賞作の「星々の舟」。2002年に連載され2003年に受賞。
お、重い。
20年前の作品ですから、今では使い古されたような不幸展開が目白押しです。
ネタバレを避けるために詳細は書きませんが、重いものを背負いつつ生きていきます、みたいな。
この展開に古さを感じなくなはい。
男性はいつも置いていかれ、女性は何かを察して去っていく。
こいう共通点があるような、ないような。
主人公がどんどん変わる6篇の短編(中編?)小説なのですが、主人公たちは家族で、相互に関係しあっています。1章の脇役が3章で心理を明らかにしたりするなど。
各章、じと~っと終わるのですが、後の章で救われていたりして、工夫があります。
世代が色々で、抱える問題も色々、それを書き分ける技術がすごいなぁと思いました。読み手によっては共感する主人公が違うんだろうなぁと。
私は4章の「青葉闇」の主人公が中年男性なので、共感ポイントが多く「ターゲットにされてるなぁ」って思いましたね。
現状から抜け出したくて農業をやりたくなる話なんですけどね……。
基本的には恋愛ドリヴンなのですが、それだけではない。家族に対する思い、他者に対する思いが複雑に絡んでいます。
そういう意味では女性作家らしい小説な気がしますね。こういう複雑な人間関係を男性作家は描けないのでは? 少なくとも私には無理だ。
文体、ちょっとした謎の残し方、回想に飛ぶ時間軸の使い方など、すべてが上手いです。小説の技術!
しかし私の好みとしては、重い内容を好みませんし、コミカルなシーンが欲しい。
同著者の重くない作品を読んでみたいなぁと思っているところです。
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余計なお世話ですけど、村山由佳って名前に特徴がなさすぎですよね。
なぜにペンネームを使わなかったのだろうか? こだわりがあったのだろうか? 同級生にいそうな名前。
普通すぎて謎が残る。