青春の思い出増える「いちご同盟by三田誠広」


三田誠広さんの「いちご同盟」を読了しました。
高校時代の宿題をやっと終わらせたような感じ。
病気の女の子を好きになる話だとは知っていたが、それだけでもない。
身の回りの全てに悩む高校生を描いた青春小説。

「いちご同盟」は私が高校生だった時に読書感想文の課題図書の一つとして挙げられていた。その時は読まなかった。
その後テレビでもやってた。その時も見なかった。
「四月は君の嘘」というアニメを見た。ポエミーでとても良かった。「いちご同盟」のオマージュだとは分かったので、読まなきゃな、とは思った。
それでも……。

ですから、このたび読み終えて高校時代の宿題をやっと終わらせた気分です。
大人になっても少年の日の想いを追いかけてしまうものなんです。やろうと思ったことはさっさとやったほうが良いですね。急に大病を患うこともありますからね。

さて本書はかなりおセンチな男子高校生が一人称で語る青春小説。
ピアノが得意で動画編集もできる、ちょっとオタク気味な僕。
しかし突如、野球部のモテモテ男子の徹也に声をかけられ、連れていかれた先は病院で人形のような少女に出会う。もちろん恋心を抱きます。しかし徹也と仲良さげで劣等感を抱く僕。もだえ苦しむ我が心。しかも少女の容態は良くない。もっとそばに居てあげたいけれど、ああ、ああ。
というのが、メインプロットになります。

だけど、思ったよりサブプロットが多くて深い。
主人公は希死念慮があって自死した人への憧れがあったり、進路に悩んだり、弟がタメ口だったり、同級生たちにも色々あったり、情報量が多い。
高校生向けの本だと思ってちょっと舐めてたのですが、深いです。
やはり、多視点で描くのが大事なんだろうなぁ。
僕はこう思って、少女はこう思って、その親はこう思って、野球少年はこう思う。ここに深みが出てくるんだろうな。

1990年発行なので、32年前の作品。
ビデオカメラがキーアイテムになっていて、そこに古さを感じるが、当時としては良いギミックになっていたんだろうなぁ。
音楽はクラシック曲なので色褪せない。

ネタバレ記載。選択範囲にすると読めます。

好きな女の子が死んじゃう話ですが、私が思っていたよりもあっさりと死んでしまう。主人公が涙を流しながら見送るシーンもなく、死を知ってから悲しみに浸るシーンもない。このあっさりさには拍子抜けしました。
四月は君の嘘は泣きそうになった、もしくは泣いたのに、本作ではそこまで涙腺は緩まなかった。
このせいで恋愛小説ではなくなって、離別の悲しさを描いた作品でもなく、前向きに生きようというメッセージを感じる作品になっているのかな。
泣いてスッキリ終わらないので、そのモヤモヤが残る事によって、深みを感じるのかなぁ。
読者にサービスしすぎるのも違うんですね。勉強になります。

青春小説はいいですよね。
高校時代、病気の女の子に恋した思い出があるような気持ちになれる。
「今でも君のことを忘れないでいるよ」
なんて、言っちゃう。


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