なぜ読めてしまうのか?「絶対泣かないby山本文緒」


山本文緒さんの「絶対泣かない」を読了しました。
サクサク終わる短編集で、いろんな職業の女性が登場するお話。
大きな事件は起こらないのに、どんどん読めてしまう。なぜだろう?
5000字ほどで組まれる起承転結は小説の良い教材になるかもしれない。

人の死はニュースになり、その報に触れて初めて知る名も多い。
2021年というのは去年のことで、小説を読まずに生きてきた私は、これまで山本文緒さんの名を知らなかった。
Twitterに流れる悲しみの声とともに、本作を知りました。

「絶対泣かない」は短いなぁと印象を受ける短編小説。各章5000~7000字ほどでサクサク読めます。一人称で語られ、いろんな職業の若い社会人女性が登場する。
大きな事件は起こらない。恋愛要素はあるけれど少なめ。ちょっと悩みがあって、ちょっと印象が変わって、前向きになる話。
これを私はどんどん読み進めたんですけど、何が面白くて読んだのでしょうか?
分からない。
この疑問を紐解くと、文芸の面白さを理解できるかもしれない。

起承転結がきっとある。
まず人物がパッと登場する。「この人はどんな人なんだろう? どんなことを思っているんだろう? 何があったんだろう?」と私は思う。
次に疑問への答えが明かされながら、悩みの元が綴られていく。
苦悩し藻掻く主人公。ここで私は主人公に共感する。
苦悩はあるきっかけでトラブルに発展し、感情の高ぶりがくる。
その結果、気付きがあって、心境が変わって、前向きに進む決意をする。

分析すると、こんな筋になる。
読者の私は何かしらの爽快感を覚えて、また次の章を読みたくなる。
そんな自分の心境が不思議だ。

大きな事件はないし、大きな達成感もない、犯人が分かるでもない。それなのにどんどん読める。なぜか?
人物に興味が湧くのか? 普通にありそうな悩みだから共感するのか?
このあたりに、ものがたり論がある気がします。
小説を書きたい私にとっては良い教材になりそうです。

1995年発行なので、27年前の作品ですから、職業や価値観が古いところはあると思う。現代の若い女性が読むと「違うな」と思うのだろうか?
分からないけれど、普遍性があって色褪せない部分は多いはず。

さて、私は小説サイトに1000字~2000字ほどの短い話をたくさん投稿した。
一生懸命に書いてた頃もあるし、勢いだけで書いていた頃もある。周りの作者との交流が楽しかった頃もあるし、周りを気にせず自分の想いだけを押し通した頃もある。
でもそれは終わりにしないと、この繰り返しが続くだけだ。もう長編に挑戦して書籍化を目指すべきだ、8万字くらい書いて新人賞に挑戦しよう、と思うに至ったのです。
だけど、こういった5000字くらいの小説で面白いものを書けなきゃ、長編なんてとても無理だなぁ。特に、事件性はないのに面白くなる手法を学ばねばならぬ。

5000字で面白いものを生み出すべく努力してみよう。
目標があれば、また私は筆を執れると思う。
いつの日か我が書籍が発売され、
いつの日か死がおとずれ、
そのニュースで我が名を知るが良い。


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